川村二郎『孤高 国語学者 大野晋の生涯』東京書籍(2009.09.11初版発行)
「これは、日本語と通して日本人とは何か、その研究に八十八年の生涯を捧げた国語学者、大野晋の物語である。」(「プロローグ 熱風」16頁)
国語学者・大野晋(1919-2008)の「評伝」。
「日本語の好きな普通の人が読んでわかるように、先生のお人柄を中心に書い」(「あとがき」269頁)たもの。
「筆者にもう一つ、忘れられない最晩年の言葉がある。
「学問というのはね、深めれば深めるほど、自分にわかることがいかに少ないかが、わかってくるものなのです」」(「エピローグ 遺言」268頁)
メモ書き
○「橋本について研鑽を積んだのは正味二年である。しかしこの間に橋本から学び、身に付けた研究手法は、生涯の財産といってよいものだった。
簡単に書くと、それは次のような五段階になる。
①単語の用例を可能な限り集める。
②文脈から意味を細かく分けて分類する。
③分類したものをグループにまとめる。
④グループごとに共通する意味を抽出する。
⑤類似の単語との差を見定める。」(106頁)
●(『広辞苑』の「基礎語」の語釈に執筆に関して)「大野にとって、辞書の編纂に直接たずさわるのは、はじめてのことだった。しかし、約千語の語の意味と用法と用例を三カ月で書くことがいかに途方もないことかは、想像がついた。」(146頁)
「大野が思いついた方式とは、こういうものだった。学生たちに『大言海』『大日本国語辞典』『大辞典』『辞海』『明解古語辞典』の五種類の辞書から、基礎語九百六十語の解説と文例をすべて書き写してもらう。まだコピー機はなかったから、こうするしかなかったからだが、それを単語ごとに、一枚の大きな紙に貼ってゆく。
それに目を通し、最も古い訳語と思われるものに①と番号を書き、古い順に②③④⑤と番号をつけてゆく。こうすることで、その語の意味の年代的な変化や、変化の脈絡がわかる。そこに『万葉集総索引』『源氏物語用語索引』『徒然草総索引』を使って上代、中古、中世と、年代順に適切な用例を書き加えてゆく。そのうえで室町末期に編纂された『日葡辞書』のフランス語訳、パジェスの『日仏辞書』やいくつかの現代の和英大辞典を使い、近世、現代の訳語と文例を書き足す。
しかしこの方式には、欠かすことのできない条件が一つあった。条件とは、上代から近代までの各時代の古文をきちんと読むことのできる能力の持ち主が不可欠、ということである。幸運なことに、竹内美智子がいた。竹内は東大国文科の戦後第一回の卒業生で、能力の高さは大野も知っていた。協力を求めると、快諾してくれた。」(146-147頁)
●誤植??
「表紀」:「「お」と「を」の表紀の違い」(126頁)
「超驚級台風」:「大野は生徒たちに超驚級台風のような印象を残した」(126頁):「超弩級台風」の誤植??
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