三浦展『下流大学が日本を滅ぼす! ―ひよわな“お客様”世代の増殖』KKベストセラーズ(ベスト新書)(2008.8.20初版発行)
大学全入時代が到来し大学生の質が極端に低下しており、日本の将来を危うくするので、大学生の数を減らすべきだということを、いろいろな側面から書いている。
人を「バカ」呼ばわりする書き方は読んでいて不愉快になるが、ともかくも最後まで読んだ。
筆者は、『下流社会』等の本を出した有名な人のようだ。
「一流大学」出の人も、今では確かに「下流」の人もいるのかもしれない。
「あとがき」には次のように記されている。
「本書は、私が日頃大学や教育について考えていることを語りおろしたものである。実証研究ではないし、学問的論文でもないので、裏付けが不足していたり、推測や伝聞が多かったりするが、大筋としては現在の大学や教育の問題の本質をとらえていると思う。」(「あとがき」226頁)
「学問的論文」でなくとも、本として出すのであれば「裏付けが不足していたり、推測や伝聞が多かったりする」のは問題であるような気がするが……。
最後の章に「提言」としてネット動画を利用した「オンライン大学」というのを提案しているが、ここで挙げられた利点は、ずっと以前から存在する通信制大学や放送大学にも当てはまるのだが、それらについては一言も触れられていない。
大卒の資格を取るのであれば、通信制大学や放送大学でも取れるのだが、なぜ多くの大学生は通学制の大学に進学するのか? それをしっかり検討すべきであろう。
ところで、「語りおろしたもの」とあるが、後述筆記なのだろうか。確かに、非常に砕けた話し言葉のような文体である。
メモ書き。
○(文学部4年女性の談話)「高校が進学校だったので、大学に行かないことの方が、普通に大学に行くよりも大変だったんです。先生や親にかなり説得されるし……。だから、とりあえず受験して、大学生になりました。」(55-56頁)
◎「大学の先生の授業なんて面白くないのは当然で、それなら自分で本を読もうというのが普通なのに、授業が面白くないから文句を言うってのは、ちょっと大学生としてどうかと思うね。」(74頁)
○「そもそも自分の頭で考えられない学生を入学させたのがまずいと思うが、今の学生は自分の頭で考えようという態度が根本的に欠落しているんだろうね。どんな情報でもパソコンをクリックしていれば出てくる時代に育ったんだから、そうなるのは当然だろう。」(86頁)
ネット検索が普及したのは、せいぜいここ10年。しかも、今の大学生が小学生のときから、ネット検索していたかどうかは大きな疑問。
◎◎「嫌なら来なくても結構っていう態度が大学には必要だと思うね。」(97頁)
○「たとえば、この『AERA』に出ている中外製薬の中堅社員研修の写真が面白い。新人にどんな言葉をかければいいのか、かけてはいけないかが書かれた紙が壁に貼られている。
言ってはいけない言葉は、「使えねー」「ダメじゃん」「そうじゃなくて」「違う、違う、違う」「そこおいとて」「そんなことも知らないの」「何回も教えたのに」「そんなの関係ねえ」。逆に新人のやる気を高める言葉は、「たすかったー」「うまくできたね」「考えたねー」「よく知ってるね、さすが」「いいとこ気づいたね」「いい質問だね」「成長したなー」「素晴らしい」「完璧だね」「よく調べたね」などなど。」(110頁)
◎◎「抽象的なことが考えられる、自分の実体験だけじゃなくて、一般的、普遍的なことを考えられる。そういう人が大学で勉強すればいいのだし、大学が育てるべき人間はそういう人間だし、大学が入学させるべき人間の基準はそういう人間かどうかということだろう。」(123頁)
◎◎◎「本当は大学に進まずに、手に職をつけて働いた方が向いている人間まで大学に入れる必要はないんだよ。大学の延命のために、そうういう人間を大学に入れて、むしろ彼らの人生を台無しにしてるんじゃないかね? 親が自分の生活を犠牲にしてまで子どもを大学にやって、それでかえって子どもを駄目にしているんじゃないかね?」(196頁)
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