« 石渡峯司・大沢仁『就活のバカヤロー 企業・大学・学生が演じる茶番劇』光文社新書(2008.11.20初版発行) | トップページ | 篠崎晃一+毎日新聞社『出身地(イナカ)がわかる! 気づかない方言』毎日新聞社(2008.8.30初版発行) »

2009年3月23日 (月)

黒田龍乃助『世界の言語入門』講談社現代新書(2008.09.20初版発行)

Dsc07761
 世界中の言語(90語)について、一言語当たり見開き2頁で、その言語にまつわる面白いエッセイをまとめたもの。
 
 「言語学書」というよりは、本当に気楽に楽しく読めて、いろいろな言語の面白さや姿や逸話を知ることができる本。
 
 読んでいて、「ああ、この筆者は、本当に「ことば」が大好きなんだな」と感じ入ってしまう。言わば「言語」「ことば」マニアであろう。
 
 さらに、言語・言語学に対して、とても客観的で論理的で(偏見や俗説や権威にとらわれずに)適切な考え方をしている点も、すばらしい。
 「きれいな日本語」とか「正しい日本語の使い方」などを読む前に、この本を読んで、「ことば」に対してどういう態度が必要か是非学ぶべきであろう。
 
 
 
メモ書き
○「古典的な類型論で考えると、エスキモー語は抱合語に属する。接頭辞や接尾辞のような要素がたくさん繋がっていくので、一つの語がやたらと長く見える。いや、正確には「語」ですらない。言語学で「単語」という用語を避けるのは、このエスキモー語のようにちっとも「単」ではなく、英語とも日本語とも違う構造の言語があることを考慮しているからだ。」(62-63頁)
 
○「小さい言語を守るためにはお金がかかる。時間もかかる。さらには多くの人の理解も必要だ。自分の財布の痛まないことを前提にして、いいたい放題な今どきの世論では、とてもやっていけない。」(91頁)
 
○(「35 ジャワ語」)「敬語法ばかりを強調すると、若い世代からそっぽを向かれる。なるほど。(原文ママ)年寄りが空威張りするための武器として、敬語を振りかざすのはどこの言語でも卑怯だよね。」(95頁)
 
○「タミル語は不幸な言語である。日本語の起源に取り憑かれた国語学者とその支持者によって、妙な取り上げ方をされてきたからだ。」(118頁)
 
○(「グリムの法則」について)「考えてみれば、正確には文字の対応であり、それはグリム自身も分かっていたのだが、言語学の世界ではこれを音韻と考えるのが通例。表音文字を使っていると、往々にして文字と音の区別がつかなくなる。」(121頁)
 
○(「グリムの法則」 系統的につながりのある言語同士の音韻対応の法則)「グリムの法則は、第一次子音推移にせよ第二次子音推移にせよ、世界の言語の中でごく一部にしか通用しないものである。(中略)ところが困ったことに、同じような法則がすべての言語にもあるはずだと信じて、他の言語の研究でも、奇妙な音韻対応を作り出そうとする人がいる。」(121頁)
 
○「会話とは語学力ではなく、経験と度胸がものをいう。」(131頁)
 
○「どんな言語でも、非常に厳格で明晰なところと、あいまいなところがあるというのが、普通なんじゃないかなあ。」(171頁)
 
○「わたしが大学で言語学を学んでいた頃、アラビア語やヘブライ語、さらにエチオピアのアラハム語などはセム・ハム語族に属する、と習った。ところが研究が進むと、セム諸語は系統的にまとまっているが、ハム諸語のほうはそのまとまりが疑問視されるようになる。そこで、旧約聖書の創世記にあるセム、ハム、ヤペテの三兄弟のうちから二人の名前をとったこの名称は、最近では使わず、代わりにアフロ・アジア語族に改名したのである。」(188頁)(表紙カバーの著者紹介欄によれば、筆者は「1964年」生まれ。)
 
○「ちょうど現代の英語教育にるいて語るとき、聴き取りのことを「リスニング」といわずに「ヒアリング」といっているようなものである。」(188頁)
 
●「朝日ジャーナル編『世界のことば』(朝日選書)のあとがきで、編者である千本健一郎氏は次のように書いている。
     ケニアのキクユ人でキクユ語の筆者でもあるG・C・ムアンギさんから、「……族」(Tribe)という表現には上位の者が下位の者を見下す響きがある、と注意されたときには、ただのびっくり以上の衝撃があった。」(190頁)
●「多くの場合、ヨーロッパでは少数民族でも「○○人」というのに対し、アジアやアフリカなどでは国家を形成していても「○○族」という表現が見られる。語族でも民族でも、無意識が無神経に繋がらないように、できるだけ気をつけなければならない。」(190頁)

|

« 石渡峯司・大沢仁『就活のバカヤロー 企業・大学・学生が演じる茶番劇』光文社新書(2008.11.20初版発行) | トップページ | 篠崎晃一+毎日新聞社『出身地(イナカ)がわかる! 気づかない方言』毎日新聞社(2008.8.30初版発行) »

コメント

初めておじゃまします。
わたくし、最近「きょうのあらかると」というココログを立ち上げましたKOZOUともうします。
ココログのphoto紹介サイトで拝見いたしました。

言葉は面白いですね。下手な小説とかも書いておりますので興味はあります。

時々寄らせていただきたいと存じます。
もしよろしかったらわたしのブログものぞいていただければ幸いです。

投稿: KOZOU | 2009年3月23日 (月) 12時28分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/37002/28757192

この記事へのトラックバック一覧です: 黒田龍乃助『世界の言語入門』講談社現代新書(2008.09.20初版発行):

« 石渡峯司・大沢仁『就活のバカヤロー 企業・大学・学生が演じる茶番劇』光文社新書(2008.11.20初版発行) | トップページ | 篠崎晃一+毎日新聞社『出身地(イナカ)がわかる! 気づかない方言』毎日新聞社(2008.8.30初版発行) »